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檻越しの対話

おり

​たいわ

​ご

 【2017.12/29 発行】

「恋は目的も動機も抱かない。

          ただ烈しい動悸を抱くだけ」

 人間とは多面体である。家族との自分、恋人との自身、友人との己、多様な一面によって構成されている。
 校舎屋上から飛び昏睡に落ちた《彼》―― 一対谷双葉。死へと続く昏睡のなかで、《彼》という多面体を構成する面々 ―― 基盤を負う睦月、自己を発露する如月、成長と分岐の前に立つ弥生サツキ、主観の中で客観視する卯月、自己を愛し存続する水無月、自己を発露する文月、多面体の根幹たる言葉〈アイデンティティ〉の葉月、恐怖する長月、面々を蒐集する神無、必要欲の下月、面々を統合する師走走師 ―― が織りなし交差する想い。そして《彼》を生かすため、如月によって奸計された物語。
 二〇〇八年二月末。これは《彼》が彼願者になるまでの噺。《彼》にまだ死の権利があった頃の噺。

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